シンポジウム 参加者リスト(発表順) – Mario VERDICCHIO, University of Bergamo – Kazuki MIYAZAWA, Osaka University – Hideyuki TAKAHASHI, Otemon Gakuin University – Reiji SUZUKI, Nagoya University
2026年2月9日長崎大学総合教育研究棟33番講義室にて国際シンポジウム「記号 AND 認知」が開催された。
Mario Verdicchio先生は「言語の基礎:意味論、記号、と記号接地」と題し、記号接地問題と、それが言語、人工知能、哲学における意味理解に及ぼす影響を探求した。分析哲学、記号論、認知神経科学、AIの伝統を受け継ぎながら、記号がいかにして単なる形式的構造ではなく意味論的内容を持つようになるのかを検討した。議論の中心となるのは、ジョン・サールの「中国語の部屋」の思考実験であり、これは統語論的な記号操作と真の意味論的理解との区別を示すものであった。批判者たちは、この実験が完全なルールブックという非現実的な仮定に依拠していると主張するが、この反論は最終的にサールの主張を補強することになる。すなわち、自然言語は有限のルールに基づく体系によってシステム化することができず、意味の計算モデルには限界があることを示唆している。続いて生成AIを取り上げ、その柔軟性と見かけ上の創造性にもかかわらず、それは物理的にも機能的にも従来のソフトウェアと連続しており、数値的・論理的操作に基づいているに過ぎないことを指摘した。曖昧性(「山」という概念)や論理的推論(モーダスポネンス)といった例を通じて、意味が完全な形式化に抵抗することを論じた。その結果、AIは意味の基盤を説明するには適しておらず、この問題は哲学的・認知的アプローチの方が有効である可能性が示唆された。
【シンポジウム 参加者リスト(発表順)】 – Mario Verdicchio, University of Bergamo – Abdurrahman GÜLBEYAZ, Nagasaki University – Yasuko NAKAMURA, Nagoya University – Wanwan ZHENG, Nagoya University – Hideki Ohira, Nagoya University – Daisuke UENO, Kyoto Women’s University – Tetsuya YAMAMOTO, Tokushima University – Hiroki OZAWA, Nagasaki University – Kazunori HAYANAGI, Nagasaki University
本研究集会では、特別講演のゲストとして、島根県立大学の村井重樹先生、神奈川工科大学の小田切祐詞先生にお越しいただきました。当センター第1班、北陸大学の金信行先生のお声がけにより実現し、それぞれ、「セッション2:ハビトゥスの社会的基盤とその社会学的応用可能性―ポスト・ブルデュー社会学を見据えて」、「セッション4:プラグマティック社会学と構築主義」のテーマでご講演いただきました。さらに、第1班、大平英樹先生の繋がりにより、フィレンツェ大学からEmanuele Castano先生に駆けつけていただき、「セッション3:Beyond Genes and Parents: The Effects of Cultural Products on Human Psychology」のテーマでご講演いただきました。プロジェクトの成果が、メンバーの繋がりによって支えられていることを象徴するようなプログラム構成となりました。
以下は一部とはなりますが、Castano先生のご講演について報告します。
●Emanuele Castano先生 「Beyond Genes and Parents: The Effects of Cultural Products on Human Psychology」
Castano先生が取り組むこの研究アイデアは、この問いに一つのヒントを与えてくれるかもしれません。「Fiction」にも様々なものがありますが、その一つとして小説が挙げられます。さらに、小説を文学小説と大衆小説に分けましょう。実証研究において、文学小説をよく読む人と、大衆小説をよく読む人では、「Reading the Mind in the Eyes Test」をはじめとするいくつかの検証を通して、前者の方が他者の心的状態を推測する能力が高いという結果が出ました。文学小説では、大衆小説に比べて登場人物同士の複雑な関係性や、それぞれの心理描写を細かく描く傾向があります。確かに読みごたえがあり、手に取るハードルは高いかもしれませんが、他者心理の推測能力を鍛える“gym”となっているのかもしれません。
Emanuele Castano先生(フィレンツェ大学)のご講演「Beyond Genes and Parents: The Effects of Cultural Products on Human Psychology」では、人間の心が形成される過程において、遺伝や養育環境に加え、文化的産物が果たす役割に焦点が当てられた。文化的産物は「何を考えるか」だけでなく「どのように考えるか」に影響を及ぼす点が強調され、とりわけ文学的フィクション(literary fiction)と大衆的フィクション(popular fiction)の比較を通して、その効果の相違が実証的に論じられた。
実験的研究では、「著者認知テスト(Author Recognition Test)」や社会的認知は「Reading the Mind in the Eyes Test」をはじめとする複数の課題によって、被験者を無作為に文学的フィクション、大衆的フィクション、ノンフィクションなどの読書群に割り当て、比較評価を行った。研究の結果、文学的フィクションを読む被験者は社会的認知、とりわけ他者の心的状態を推測する能力(Theory of Mind)において有意に高い得点を示した。一方、大衆的フィクションには同様の効果は認められず、その主な役割は娯楽性や安心感の提供にあることが示唆された。さらに、複数文化圏での調査結果は、この傾向が普遍的であることを裏づけた。