2023.3.1 第2班第1回班別会議

 第二班の第一回班別会議では、3月11日に行われるヒトと動物の関係学会のシンポジウムの予行もかねて研究報告が行われました。はじめに、動物と人間、または人間とそれ以外のものの関係について人文学的な面から考えていこうとする趣旨の説明がありました。

 立花先生のご発表では、アリストテレスの人間観について、倫理学の観点からまとめていただきました。どんな立場の人を人間とするのか、幸福とは時代や場所に通じる普遍的なものなのかということについて、分野を超えた議論が交わされました。

 岩﨑先生のご発表では、インドの物語において動物が言葉を話す事例を挙げ、言語を得ることで道徳的主体として行為の責任を負っているというお話をいただき、まだ議論の余地はあれど人間と動物の境界についての新たな考え方となりました。

 高橋先生はご自身の研究について幅広くご紹介いただき、人間がコミュニケーションの相手をどう認識しているかということや、孤独について実証した結果を踏まえ、人間が人生と前向きに、閉塞感なく向き合うことを実現するために、何かすることではなくそこにいること(being)で愛を与えるエージェントの開発についての展望を知ることができました。(文責:鈴木映恵)

2023.2.18 セミナー「人新世」におけるアート

 第5班は、2023年2月18日にセミナー「「人新世」におけるアート」を開催し、京都大学名誉教授の岡田温司先生を講師に迎えて「アントロポセンとアート」と題したご講演を行っていただきました。講演では、16世紀後半から20世紀初頭までという長いタイムスパンが扱われ、小氷期の気候変動と植民地主義、エコロジーとエコノミーの同根性、火山噴火とサブライム/ピクチャレスク、グローバルな気候変動への想像力、産業革命とインダストリアル・サブライム、大気汚染と芸術といった幅広いテーマが論じられました。「人新世とアート」というと、比較的最近の現代アートが俎上に載せられることが多いですが、本講演は、このテーマの歴史的な射程の広がりにあらためて注意を促すものでした。また、提示された論点はいずれも、第5班にとって今後の研究の指針を与えるような示唆に富むものでした。(文責:武田宙也)

2022.12.15「課題設定による先導的人文学・社会科学研究推進事業」シンポジウム

 標記シンポジウムで本プロジェクトの活動報告をすると共に、パネルディスカッションに参加しました。(https://www.jsps.go.jp/j-kadai/symposium/20221215-2.html)

 2022年5月末に採択通知を受け、研究期間は6月1日からでした。我々のプロジェクトが、申請と同時に始まっていたのだったら、なかなか厳しかったかもしれません。しかし、多くのメンバーは長年の共同研究を行ってきた仲間であり、今回新たにご一緒する人たちとも、申請に向けて何度もミーティングを重ねていたので、活動報告のネタに困ることはありませんでした。

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 活動報告では、本プロジェクトの趣旨と目的を説明したあと、3つの研究の具体例と一つの研究実践を紹介しました。研究の具体例の1つ目は、フロイトの著作を対象としてテキストマイニングを用いた分析例です。フロイトの最初期から最後の著作に至るまでの思想の流れを説明しました。2つ目は、理論班の鈴木麗璽先生のモデルの紹介です。鈴木先生とは、このプロジェクトの前身である先導的人社研プロジェクト「予測的符号化の原理による心性の創発と共有」(代表:大平英樹)により、2017年以来ご一緒してきました。この間の議論で使ってきた動的な社会のモデルを、今後はいくつかの方面に拡張して課題のトピックに関連させていきます。3つ目は、ロボティクスと言語を主題とする第3班の南谷先生の研究の途中報告です。文学×言語哲学×発達心理学×記号創発ロボティクスの今後が大いに期待されます。

 実践例としては、南谷先生が長年実践されてきた読書会をご紹介しました。人文学では昔から読書会は、当該の分野で重要文献を共に読みつつ議論を交わす場であり、若手育成の場としての役割も果たしてきました。「終わらない読書会―22世紀の人文学に向けて」と銘打って、南谷先生が大学内外の人たちを100人以上動員して新たな形態の読書会を展開させます。

 パネルディスカッションでは、本シンポジウムのタイトルでもある「未来社会を見据えた人文学・社会科学分野における学術知共創の課題について」、事業委員長の盛山和夫先生を初めとして人文学以外の方々から、人文・社会科学に寄せる期待について語られました。これらに対し、私からは、研究に携わる当事者として、人文学の人間として、人文学をめぐる社会的・学問的状況について、歴史的文脈を振り返りつつ、人文学の言葉ならでは語ることができる「希望」や「赦し」、細分化し専門化した知を編むという役割などを紹介しました。いずれも、メンバーとの議論の中で出てきたものです。その意味でこのご報告は、本プロジェクトの知の結集でありました。(文責:中村靖子)

2022-12-21 「ロボットと感情」ワークショップ

大阪大学基礎工学研究科にて,超班型特別企画「ロボットと感情」ワークショップを開催しました。人とロボットの共生について考える際に避けて通れない問題の一つに,「ロボットには“感情“を実装させることができるのか」というものがあります。本ワークショップでは,日本における Android 研究・開発の最先端をになう石黒研究室のメンバーである高橋英之特任准教授の企画の元,「ロボットと感情」について検討するため,様々な領域の研究者が集いました。はじめに,石黒研究室の所有する人間の話し言葉に反応する Android や複数体のお喋りロボットなどの実演を見学したのち,大平英樹教授による感情についての講演を聞き,その上でロボットと感情についてディスカッションを行いました。ディスカッションでは,どうすればロボットに感情が備わったと見做すことができるのか,ロボットに感情が備わると何が起きると予測されるか,そもそも感情とは何なのか,等の幅広い論点について,認知神経科学や心理学,複雑系科学,科学哲学史など様々な研究領域の専門家から多角的・超領域的な議論がなされました。本研究プロジェクトの第3班では今後,このワークショップで得られた知見やアイディアを基に,実証的な研究を行っていく予定です。(文責:池田慎之介)

2022-12-12 人文知共創センター除幕式

 12月12日、人文学研究科附属人文知共創センターの看板除幕式が挙行されました。

 人文学研究科附属人文知共創センターは、人文学が自然科学を含むさまざまな分野の研究者と共に協働し、未来社会にむけた総合的な人文知を創出することを目指して設置されました。
 上掲式には、杉山直総長、周藤芳幸研究科長、中村靖子センター長、星野幸代副研究科長、梶原義実副研究科長、センター専任教員、センター兼任教員らが参加し、執り行われました。周藤研究科長からはセンターの概要が説明され、「諸科学を先導する人文学という力強い旗印のもと、このセンターが人文学の発展にブレークスルーをもたらすものとなることへの期待が述べられました。続いて杉山総長からは、「「総合知」は理系の研究者だけでは達成できない」と、共に「総合知」を共創すべく人文学へのエールが送られました。 

2022-11-19 理論班の班別会議(拡張版)

 理論班(第一班)のメンバーに加え、拡張会議として各班を代表する先生が集まりました。今後の班別会議の運用方法について各班の目線を合わせつつ、理論班メンバーの金信行先生、鈴木麗璽先生、田村哲樹先生より研究進捗について報告がありました。
 それぞれ違った専門分野をもつメンバーが集まると、研究内容を多角的に考察することができます。たとえば金先生のご発表において、社会を「社会的なつながり」ではなく、「人間と非人間の連合体」として再定義するというラトゥールの認識に対し、非人間には政治的な能力があるのか、それともあると“見なす”のみなのか、という議論が展開されました。仮に非人間をAIロボットと置き換えるならば、その能力があるとする方向で第三班は検討を進めています。他方、非人間をまた他のオブジェクトに置き換えた場合、汎用性は変わるのでしょうか。
 多くの視点を取り入れつつ、各班の研究が進められています。(文責:綾塚達郎)

【研究報告】
・金信行「ブリュノ・ラトゥールによるテレストリアル概念の提唱とその批判的合意について」
・鈴木麗璽「社会集団の生成と崩壊に関するモデル・実験アプローチ」
・田村哲樹「人新世における民主主義の課題は何か?」

2022-08-11,12 キックオフミーティング

 対面参加およびオンライン参加を含め、11日には26名、12日には23名の研究者およびスタッフが集まりました。

 当プロジェクトにおいて、これからの人類の在り方を問うため、その一つのキーワードとしてラトゥールらが提唱したアクターネットワーク理論が挙げられます。この社会を人間中心として考えず、私たちの身の回りの自然環境や様々なオブジェクトも含め、非人間的なものも重要なアクターとして考えます。このとき、対象とすべきアクターの数は膨大なものとなります。加えてそれぞれのアクターの性質やつながりも含めた検討を行うためには、様々な視点、手法が必要となります。それを可能にするのが当プロジェクトの多様なメンバーではないでしょうか。人文学の手法に加え、自然科学の手法も取り入れつつ、「人新世」における人間性の根本を問う研究および活動をこれから推進していきます。(文責:綾塚達郎)