2024.2.22 第3班の第5回班別会議

2024年2月22日、オンライン(Zoom)にて第3班の第4回班別会議が開催されました。(参加者/敬称略:池田慎之介、和泉悠、大平英樹、ソニア・ザン、鄭弯弯、中村靖子、南谷奉良、宮澤和貴)本班別会議では各班員の2023年度の進捗報告に加えて、班員である宮澤和貴先生が登壇される共催企画の第6回終わらない読書会についての打ち合わせ、次期テキストマイニング講習会及び叢書刊行企画会議の日程調整が行われました。2023年度の第三班の活動成果は極めて順調で、ロボット、生成AI、痛みと可傷性、主体化と言語獲得のモチーフを通じて、当初の目的である班員間の異なるディシプリンを研究内容面で関連させることが実現しつつあります。また、予定していた年2回の班別研究会議と第4班との合同研究会も実施することができ、着実に人文知と自然科学の連携が取れてきていることを実感できています。

🌟南谷奉良

2023年5月31日に実施したテキストマイニング講習会(講師:鄭弯弯氏)と第3・4班合同企画『悪口ってなんだろう』(和泉悠著)合評会の成果を通して、Kazuo Ishiguro, Klara and the Sunについてのテキストマイニング分析を8月27-28日の第3回研究集会で発表した。業績成果としては、第三班のキーワードである「痛み」に関連した論文を、京大英文学会誌のAlbionに投稿し、2023年11月に掲載された。共催企画の「終わらない読書会」の第5回目を実施し、伊藤琢麻氏(ソルボンヌ・ヌーヴェル大学博士課程)と、コメンテーターとして森田俊吾氏(奈良女子大学・専任講師)を招聘して若手研究者のネットワークの拡大を図り、生成AIによる作詩の可能性とダダイズムの特質を議論した。同読書会については第6回目を3/15に開催し、本班員の宮澤和貴氏を講師として、Klara and the Sunをロボットの言語・概念学習の観点から読みなおしを行う予定である。人工知能関連では、人文知を活用した生成AIをテーマとする京都大学公開シンポジウムを12/10に開催し、オーガナイザーを務めた。同シンポジウムには、AAAの第5班の山本哲也氏をパネリストの一人として招聘し、科学技術史、ゲーム文化学、地理学、英文学、臨床心理学・心理情報学の観点から、生成AIの多様な応用可能性と諸問題について議論を行った。生成AIについては開発の速度が極めて早いことから、関連する主要な出来事と応用可能性と問題についてフォローアップする必要があり、「孤独とロボット」の問題を研究しているソニア・ザン氏(大阪大学人類学部招聘研究員)にニュースのリスト化作業を時系列順に進めてもらっている。

🌟和泉悠

2023年前半に開始した、児童向けアニメ作品『ひろがるスカイ プリキュア』『ポケットモンスター』の会話文書き起こしデータの作成を後半においても進めた。それぞれ30話程度の書き起こしを行い、あわせて1万5000件程度の発話データを収集した。今後分析を進めていく。

 デジタル社会における有毒・有害な言語についての研究成果をまとめ、AAAの他のメンバーとともに国際会議にて発表する準備をおこなった。2024年度に開催される2つの国際会議に、要旨を提出し、採択された(World Congress of Philosophy in Rome 2024年8月、The 12th East-West Philosophers’ Conference 2024年5月)

 ヘイトスピーチといったオンライン上の有毒・有害な言語に対抗するひとつの手段として、ホープスピーチと呼ばれる言語の側面についての研究が英語や南アジアの言語を対象として始まっているが、日本語を対象とした研究はまだ存在しない。そこで日本語YouTubeコメントで構成されるデータセットを作成した。その成果は言語処理学会30回年次大会(2024年3月)で発表される。

🌟池田慎之介

2023年度は、2022年度に実施した2件の研究を査読付き国際誌に投稿した。1件はSocial Psychology and Society誌に採択となり、現在印刷中である。もう1件はPsychologia誌に採択され、既にAdvance online publicationとして公刊されている。また,ChatGPTがヒトの意思決定に及ぼす影響について新たに1件の調査研究を実施し、現在得られた結果を解析中である。更に、他班の2名と共同研究計画を立て,民間財団の助成へと申請を行った。この研究は、VR環境下で個人のセクシャリティの変容を検討するものであ、AAAプロジェクトでの研究を押し広げるものとなる。加えて、今年度より着任した金沢大学において、子ども研究を行うための環境を構築した。これにより次年度からは,スムーズに子どもを対象とした実験が行えるようになった。

🌟 宮澤和貴

第41回日本ロボット学会学術講演会にてオーガナイズドセッション「OS20:大規模言語モデルとロボティクス」を開催した。1件の基調講演と、7件の一般発表が行われ、大規模言語モデルとロボティクスの接点について幅広く議論した。今後は言語に限らず視覚や聴覚、ロボットの制御についても議論を広げていく。また、性格を付与したChatGPTによる対話誘導に関する研究を進めた。ポジティブやネガティブなどの性格を付与したChatGPTを用いて、ChatGPT同士での対話実験を行い、対話相手の発言をポジティブに誘導できるかを検証した。さらに、大規模言語モデルへの罵倒に関する研究の準備を進めた。ロボットの身体に根ざした痛みの理解に先立ち、大規模言語モデルが言語的な痛みをどのように理解し、痛みを伴う言葉がどのようにモデルの出力に影響を及ぼすのかを検証する予定である。