2023.5.26 第4班ワークショップ 「17世紀〜21世紀のフランス文学におけるジェンダーと性」

2023年5月26日、京都大学大学院文学研究科・文学部フランス語学フランス文学研究室にて、「17世紀〜21世紀のフランス文学におけるジェンダーと性」« Genre(s) et Sexualité(s) dans la littérature de langue française (17e – 21e siècles) » と題するワークショップを催しました。本プロジェクトメンバーのマリ=ノエル・ボーヴィウ(明治学院大学)と鳥山定嗣(京都大学)に加え、フランスからシャルル・ヴァンサン先生(ヴァランシエヌ大学)とラファエル・ブラン先生(リヨン高等師範学校)を、国内からジュスティーヌ・ル・フロック先生(京都大学)をお招きし、各自の研究紹介と意見交換をおこないました。

 ル・フロック先生は「マドレーヌ・ド・スキュデリー『サッフォーの物語』における女性の表象」(La représentation des femmes dans L’Histoire de Sapho de Madeleine de Scudéry)と題して、17世紀フランスの女性作家マドレーヌ・ド・スキュデリーの作品におけるサッフォーの描かれ方を通して、女性の教育やふるまいに関するこの作家の見解を紹介されました。

 ブラン先生は「18世紀における性差の問題を探求するためのアプローチ」(Différentes pistes pour une exploration de la question de la différence des genres au 18e siècle)として、フランス革命期にフランス語の「女性らしさ」を批判し、言語の「男性らしさ」を取り戻すべきという言説があったこと、カサノヴァ作品における言語とジェンダーの問題、ユートピア文学(両性具有、性差なき世界)など、さまざまな研究アプローチを示されました。

 ヴァンサン先生は「エリザベット・バダンテールの後、ディドロ、トマ、デピネ夫人を読み直す」(Relire Diderot, Thomas et Madame d’Épinay après Élisabeth Badinter)という観点から、現代フランスの思想家・フェミニストであるバダンテールの著作を批判的に検討し、18世紀の社会的・文化的背景を十分に考慮して、ディドロ、トマ、デピネ夫人をはじめとする18世紀の作家を読む必要を説かれました。

 ボーヴィウは「簡潔さのレトリックと女性差別」(La rhétorique de la concision au service de la discrimination : l’exemple de la discrimination de genre)という問題について、現代フランスにおける「コラージュ・フェミニスト」の運動を紹介し、簡潔さのレトリックがジェンダー差別の問題とどのように結びついているかを示しました。

 鳥山は「フランス詩におけるジェンダーとセクシュアリティ」(Genre et sexualité dans la poésie française)について、脚韻などに見られる言語的ジェンダーが作家のセクシュアリティとどのように関わるか、また16世紀以降の辞書や詩論書の記述が当時のジェンダー観をいかに反映しているか、その一端を紹介しました。

 その後、質疑応答および全体討議をおこない、人文学の研究を他分野(とくに生物学、行動学、進化心理学、精神分析学)に結びつける可能性(たとえば「両性具有」に関する言説と用語法の歴史的検討)や、海外の研究者と協力する可能性について話し合いました。(文責:鳥山・ボーヴィウ)