2023.3.28 2022年度全体研究集会

「お互いすり合わせるというより、セッションです」

中村靖子 プロジェクト代表

 プロジェクト代表・中村先生は研究会について、このように話します。プロジェクト全体や各班の方向性を最初からガチガチに固めるようなことはありません。メンバーそれぞれが面白いと思うことを模索し、お互いに聞きあう。そうして生まれる臨場感や緊迫感が、今までになかった研究テーマを生み出しつつあります。

 たとえば、第5班「生政治とアート」メンバーの池野先生は、第2班「自然と人間の相互関係史」メンバーの伊東先生が企画したシンポジウムを通して自身のテーマが見えてきたと言います。「どのように問題の設定を行うか悩んでいましたが、シンポジウム『どこまでが動物なのか―人文学から考える』に発表者として参加する中でクリアになりました」

研究集会のようす。各班メンバーが一堂に会した

 そのテーマとは、「人間と人間以外の生物による『表現』を考える」、というもの。一例としてクジャクを想像してみましょう。雄のクジャクが独特な模様の羽を大きく広げる“表現”は、雌に対する求愛行動のためです。雌のクジャクにとってより魅力的にうつる姿として選ばれ続けた結果、今のような姿に進化したとされています。

性淘汰によって今の姿に進化したクジャク。美しい姿をしているが、人に対して魅力的になることを目的に進化したわけではない

 そして同時に、私たち人間にとっても美しいと思わされる姿です。このように種を超えて魅力を感じるのはいったいなぜなのでしょうか。このことは、人間と人間以外の生物間において、感性的コミュニケーションが成立することを意味するのでしょうか。こうした問いを、池野先生は研究の方向性の一つとして掲げています。

 「まとまるのだろうか、という不安は全くありません。お一人おひとりの研究がしっかりしているので、ぜひ好きなようにやってほしいです」

 それぞれが個性を発揮するプロジェクトチームを見守る中村先生は、安心したように話します。

「プロジェクトは始まったばかり。今は探索の時期として選択肢を広げるようにやってほしいですね」

(文責:綾塚達郎)