名古屋大学×金沢21世紀美術館共催シンポジウム

題目:「すべてのものとダンスを踊ってー共感のエコロジー」

期間:2024年11月4日(祝日・月) 10:00~13:00 

会場:名古屋大学東山キャンパス 坂田・平田ホール(愛知県名古屋市千種区不老町 理学南館)*同時通訳有り、事前予約不要、参加費無料

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名古屋大学 × 金沢21世紀美術館 共催シンポジウム「すべてのものとダンスを踊って―共感のエコロジー」|イベント|金沢21世紀美術館 | 21st Century Museum of Contemporary Art, Kanazawa. (kanazawa21.jp)

すべてのものとダンスを踊って―共感のエコロジー|金沢21世紀美術館 | 21st Century Museum of Contemporary Art, Kanazawa. (kanazawa21.jp)

ご挨拶

このたび、人文知共創センターは、金沢21世紀美術館との共催でシンポジウムを開催することになりましたので、ご案内申しあげます。

 金沢21世紀美術館は、今年で創立20周年を迎えます。その記念イベントの一環として、11月2日より、金沢21世紀美術館では、展覧会「すべてのものとダンスを踊って——共感のエコロジー」が開催されます。
https://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=17&d=1821
すべてのものとダンスを踊って―共感のエコロジー|金沢21世紀美術館 | 21st Century Museum of Contemporary Art, Kanazawa.
石川県金沢市にある現代美術館です。来館情報、展覧会、イベント、教育普及プログラム、コレクションの紹介など。www.kanazawa21.jp

 この展覧会は、思想をアートで実践するという点でも、非常に革新的な内容となっており、1人でも多くの方に、展覧会にもお足を運んでいただけるよう、この名古屋で、展覧会の趣旨と意義を発信することになりました。

 人文知共創センターが推進する学術知共創プロジェクト「人間・社会・自然の来歴と未来:「人新世」における人間性の根本を問う」 ( 「AAAプロジェクト」 )は、理論的柱の1つとしてラトゥールの思想を据えており、美術館館長の長谷川祐子さんは、晩年のラトゥールと共に仕事をされた経験もあり、今回の展示にはその思想が反映されています。

 展覧会のコ・キュレーターを務めるエマニュエール・コッチャ氏(パリ社会科学高等研究院)は、植物の哲学で著名な方で、アガンベンの弟子でもあり、『メタモルフォーゼの哲学』などの著作が翻訳されています。

 本シンポジウムではコッチャさんに基調講演「Metropolitan Nature: How Nature builds Cities」をしていただき、続くディスカッションでは、館長、キュレーター、そして私どものプロジェクトより、感情史、美術史、インド哲学、認知科学とロボティクス、臨床心理情報学の研究者が参加し、それぞれの観点から展覧会を照射し、これに照応してコッチャ氏からコメントをいただきます。

 是非とも多くの方においでいただけますよう、ご来場をお待ちしております。               

人文知共創センター 中村靖子

共通世界の構築への誘い――ラトゥールとキュレーション

 戦争/地球環境問題/貧困を始めとした様々な危機を抱える現代において、私たちはかつてないほどの「分断」を経験しています。この地球規模での危機および「分断」状況において、私たちが人間/非人間のような種別を問わず地球に住まう存在として共に在り続けるためのグランドデザインの構築は、事態が刻一刻と深刻化するなかで地球に住まう私たち誰しもにとって喫緊の課題であるといえるでしょう。

 この課題へ対処する上で鍵となるのは、脱人間中心主義的思想の旗手として名を馳せたブリュノ・ラトゥールの思想実践です。科学活動の営みを人間/非人間の絶え間ない相互連関として捉え直すアクターネットワーク理論(ANT)の視座を確立したラトゥールは主著『虚構の近代』(1991年)において、人間の社会/非人間の自然、そして社会と自然を区別する近代/これらを区別しない非近代という、弁別的な思考様式それ自体が近代人の偶像であると大胆にも宣言します。近代の象徴ともいえる科学そして近代そのものの人間中心主義を解体し、脱人間中心主義的な枠組みへと再構築するラトゥールは、2000年代以降展覧会制作者としてキュレーション実践へと身を投じます。ラトゥールはドイツのカールスルーエ・アート・アンド・メディア・センター(ZKM)において、「Iconoclash」(2002年)/「Making Things Public」(2005年)/「Reset Modernity!」(2016年)/「Critical Zones」(2020年)といった数多くのキュレーションを手掛けましたが、ラトゥールのキュレーション実践の焦点は参加者それぞれの視点を還元することなく全員が参加可能な共通世界を構築することにありました。ラトゥールは人間か非人間かを問わず種々の存在がもつれ合い連関する姿をありありと提示することを通じて、オーディエンスを連関が絶え間なく生成変化する共通世界の構築活動へと誘っていたのです(ご関心がある方は、長谷川祐子編[2022年]『新しいエコロジーとアート』を是非ご覧ください)。

 共通世界の構築、これはラトゥールの思想実践と本シンポジウムをつなぐ重要なキーワードとなるでしょう。本シンポジウムは、開館20周年展覧会企画において総合的なエコロジー思想を体現した作品展示および思想の視覚化・可感化を通じた学びの提供を企図する金沢21世紀美術館、そして人間−社会−自然の来歴を辿り直し〈他者や自然との柔らかな均衡〉としての未来を構想する名古屋大学人文知共創センターが協働する共催企画になります。本シンポジウムの開催が、私たちが共に在り続ける共通世界の新たなグランドデザインを提起する上での橋頭堡のみならず、オーディエンスそして未来の他者が地球に住まう存在としてこの共通世界の構築活動へと参画する実践的な契機となることを願ってやみません。

 是非とも多くの方においでいただけますよう、ご来場をお待ちしております。               

北陸大学 金 信行