プロジェクトの概要
このウェブサイトは、研究プロジェクト「人間・社会・自然の来歴と未来「人新世」における人間性の根本を問う」(Anthropocenic Actors and Agency in Humanity, Society,and Nature,略称:AAAプロジェクト)の活動報告や広報のために作られたものです。
このプロジェクトは、日本学術振興会の助成する「課題設定による先導的人文学・社会科学研究推進事業」学術知共創プログラムのひとつとして採択されました。2022年から6年間にわたり活動していく計画です。
プロジェクトの趣旨と目的
しばしば人文学は、抽象的で思弁的な議論と見なされ、実社会から遊離しているかのように言われますが、それが実態に即しているかどうかは別として、どうしてそのようなイメージが流布してしまったのでしょうか。人文学の学問的方法には、文献研究、フィールド調査、実験などがありますが、これらは人文学に限ったものではありません。片や自然科学は、実用的で、人々の生活や社会環境の向上に即刻役立つと見なされていますが、科学技術の向上だけでは、未来社会に対し希望を抱くことはできないことも、十分に認識されているでしょう。本プロジェクトは人間・社会・自然の来歴を辿り未来を眺望することで、科学技術と伝統的人文学とを繋げ新たな人文学を確立することを目指します。現在我々が直面している自然環境と社会環境の諸問題の背景に、人間が自らの姿を形作ってきた過程があります。そして技術と共に、人間の生活環境は刻々と変わり、人間自身もまた常に適応的に変容してゆきます。これらを踏まえ、〈他者や自然との柔らかな均衡〉こそが、新たな人類社会で価値を持つことを提言します。
役に立たないというイメージの根元には、人文学が何らかのモノを生産、提供するわけではないということがあるでしょう。しかしながら、人と社会を動かすのはモノばかりでなく、時にはモノ以上に、理念や概念、イメージや言説が強く人と社会を駆動してきたことは、数々の宗教的対立、文化的対立が示す通りです。人文学の基礎にある「自由」や「人権」の理念は、人間・社会・自然についての深い思索から生まれ、人類の歴史を大きく変えてきました。同時にこの人類の歴史は、常にテクノロジーの開発と共にあり、人間は、テクノロジーによって拓かれる予測しがたい未来社会を、この地球に住まうすべての生き物たちと共に生きてゆかなくてはなりません。そのためにも、本プロジェクトが提唱する〈他者や自然との柔らかな均衡〉が必須なのであり、豊穣な人文知を諸科学と連携させつつ、統合的な知の営みを共創する場が必要です。ロボット工学やアート研究、社会システム研究等を内包する本プロジェクトは、学術だけでなく社会を先導する研究となることが期待されています。このようにして本プロジェクトは、学際的に開かれた人文学の叡智が先導する未来社会の道筋を示すことを目指します。
代表 中村靖子(名古屋大学)